乗り物酔いにならない絶対的な自信がある。
自身でサーキットでのドリフト走行、ラリープロドライバー運転による助手席体験、遊園地の乗り物で恐怖を感じたこともない。
バス酔い、船酔いも経験なし。
RIGS Machine Combat Leagueは人型マシンに乗り込む対戦型ロボットアクションゲームである。
Amazonのレビューを見ても多くが相当に酔うと書いてあったが、皆、三半規管が貧弱なだけだと思っていた。
VRヘッドセットを装着し見たオープニングは、狭い職場を完全に対戦アリーナへと変えた。頭の上をまたいで通るマシンに身を縮めた。感じたことのない感動を覚えた。
チュートリアルが始まり、対象物をみる、照準を合わせる、ドローンを撃つ練習をする。この時点で、マシンの脚はロックされており移動は出来ない。
次に、脚のロックを外し工場の中を移動する。教官が工場内では低速モードにしかならないからと教えてくれた。
なんだよ!全然酔わねぇじゃねぇか!!余裕だな!
実際に対戦アリーナで、移動しながら的を撃ち、回収物を集める練習を始めた。
この直後から、違和感がすごい。視覚と聴覚から脳への入力情報と体が予測する重力の感じ方が全く違い、圧倒的な違和感がある。
これが酔いなのかな?
いや、オレが酔うはずがない。
クルマをスライドさせてもコントロールを失わず、自分のいる位置と予測するルートを完璧に合わせることができる。
Amazonレビューの多くは慣れると書いてあったので、気持ち悪かったが続けた。
最初のチュートリアルが終わったところで、練習用の機体より1ランク上のマシンをもらえることになった。
何型のマシンか忘れたが、2段ジャンプが出来る機体をチョイス。
先ほどのチュートリアルを行った場所でマシンテストをした。
気持ちが悪い、と言うか具合が悪いようにも感じていたが、2段ジャンプをしてスゥーッと下に落ちること数回、
突然、血の気が引きヘッドホンからの音が遠くなっていった。
失いかけた意識の中、テーブルに肘をついて頬から手を滑らせてVRヘッドセットをずり上げた。
10分ほど机に頬を付け、意識はあったが半目で遠くを見ていた。
フラフラしながらコップで水を飲んだ。
しばらく我慢して無理にプレイしたのが悪かった。酔うはずがないと錯覚していたからだ。オープニングに感動し過ぎて慣れるまで止めないと思っていたのも悪かった。
かなり久しぶりに貧血になった。
運転が出来る状態まで回復したところで電源を切り家路についた。
帰宅後、妻より
「どうしたの?顔色悪いよ、目の下にクマ出来てるよ。」
PS4 ProやVRを買い会社に置いてるとは口が裂けても言えないので、VR酔いして貧血になったとは言えず、仕事で疲れたと言ってしまった。
正直を言うと、このゲームのことを思い出しただけでも気持ち悪くなる。トラウマになったかも知れない。
あのPS VRを買ったときのテンションは、
遙か彼方に行ってしまった。
おしまい。